昨年の受験を振り返って ?大野所長と各担当講師の座談会 桐朋学園小学校編

大野(所長):桐朋学園への23人合格は過去最高でした。
神尾(桐朋クラス担当):目立つ子よりも、一つのことに地道に取り組み、それをコツコツ積み重ねてきた子。指示をしっかり聞けて、よりよくするために、プラスアルファの工夫ができる子。相手を気づかうおおらかな子。こうしたお子様たちが合格しました。

思考力が問われる

大野:バランスのよい、健やかに育った子という印象ですね。また今回に関しては、バランスはもちろんですが、知的能力の高い子が多かったです。つまりペーパーができ、公開テスト上位の子ばかりでした。入学試験では、特にひも通しの問題は難しかったですね。
神尾:大人でも悩むくらいの難しさでした。
大野:表だけでなく、裏も同じようにひもを通すという、かなり思考力の必要な課題でした。

集中力を持続する

河本(絵画クラス担当):絵画に関しては、指示を聞けて、工夫する力があることに加え、心が安定していて波のない子、根気のある子が合格されました。
大野:桐朋では、作品の出来栄えだけでなく、作る過程をよく見ている学校です。楽しみながらも、集中力があり、それが持続しているかどうかを見ているようです。コツコツと積み重ねられことが大事なのは、桐朋の先生によると、(音楽学部を除けば)大学のない学校なので、勉強する姿勢として必要だということのようです。
河本:絵画工作の昨年の課題は、紙皿のある点と点を結び、ハサミで切り込みを入れ、指示を聞いた後にさらにその紙皿で自由工作をさせるという、工夫力を見るものでした。指示が聞けたうえで、工夫ができて楽しめる。その中で少し抜きんでている、または長い試験時間中に集中していろんなことを盛り込めることが求められました。日ごろからいろんな材料と道具を使い、課題に取り組んだお子様が対応できたと思います。材料や道具でとまどうようでは、工夫ができないばかりか、何もできなくなってしまいます。

子どもを通して家庭を見る

神尾:ここ数年の傾向を見ると、友だちとどう関わっていけるかどうかが問われています。桐朋の場合、親の面接はないので、子どもを通して家庭を見ているようです。その意味では、去年の課題だったおままごと、材料の盛り付けや、テーブルセッティングなど、親がどれだけ子どもに関わっているかがうかがい知れる良問でした。親が子どもの目線になって、子どもと目を合わせてお話をしているかがわかる課題が増えていくのではないでしょうか。
大野:そうですね。頭がよく、手先が器用なだけでなく、愛情に恵まれて育っているかを見るのが、このおままごとの課題でした。ゲームが出題された年もあります。指示が大変複雑で、理解力が試されます。また、ゲームの間中ケンケンをするという年もありました。忍耐力が必要ですし、日頃から遊べてないとこなせないですね。

普段から友だちと遊ぶ

神尾:親だけと遊ぶ子は、思う通りに動くのが当たり前になってしまいます。大勢のお友だちと遊んでいる子は、周りへの配慮が自然と身についています。これが、決まりごとを忘れてしまったお友だちにも、親切に教えてあげられることにつながります。
大野:特に女の子にそのタイプの子が多かったですね。ゆったりとしてやさしい子です。男の子はとにかく集中力のある子が多かった。
神尾:入学してからも、決まった通りの算数でなく、いろんな発想力を求められます。高学年になると、例えばペーパー1枚に問題が1問書かれていて、答えを導くまでにペーパー全体を使って考えるような課題を行います。そのためにも、発想力を求めているのかもしれませんね。

配慮と工夫の自由遊び

大野:自由遊びが出されました。
中村(行動観察クラス担当):自由遊びは、生活の中でどれだけ豊富な経験をしたか、遊びをどれだけ楽しんできたかという点を見るもののようです。与えられた材料を使って、自分たちで工夫し、楽しめるかは、経験から生まれるものです。身の回りのもので、例えば転がり方を楽しんでみようというように、いろんな側面からものを観察したことがあったり、工夫したりした経験が重要です。
大野:自由遊びではあるものの、自由でない。どう気を付ければいいのでしょうか。
中村:みんなで遊ぶということは、課題の中に必ず含まれています。何か一つのもので遊ぶとしても、自分の順番のときにひとりで楽しむというのではなく、周りの友達を感じて、考えることが大切です。例えば打ち合いをつなぎ、回数を重ねるとします。落ちてしまったら、次はもっと高く上げよう。友だちの近くに寄せるというように、周りに配慮すると楽しく遊べます。また、与えられたものが軽いものなら、水に浮かばせる。重いものなら、高く持ち上げると危ないから、転がす。そのものを使ったことがなくても、観察することで、どのように使えるのかを考える。このように、ものごとをとらえる力で差が出ます。

大野:23人合格の理由はなんでしょうか。
神尾:行動観察クラスと絵画クラスとの協力がうまくいったことですね。
大野:ひも通しのように、思考力を見る課題が出たことも一因だったのではないでしょうか。メリーランドでは単なる訓練ではなく、考える力を付ける教育を行っています。よく考え、友だちに配慮する子どもを育てたことが、飛躍の理由の一つでしょう。現在、桐朋小学校では協調できない子が多いと問題になっていると聞きます。だから今回のような取り方は、当面変わらないのではないでしょうか。
神尾:1日目には、指示のある巧緻性と個別の制作課題。2日目には行動観察で子どもたちをじっくり見る。以前は1時間の試験の中に、4?5個の課題が含まれていることがありました。少ない課題の中で、子どもの本来の姿を見るという傾向は続くのではないでしょうか。
大野:絵画ではどんな点に気を付けたのでしょうか。
河本:いろんな道具や材料を使いました。見方、とらえ方の引き出しを多く持たせようとしました。そのため、四足動物、昆虫、海の生き物、乗り物、食べ物を描いたうえで、自分の好きなものを描かせるようにした。いろんな行事にご両親、お友だちと参加していると、つくるものに生きてきます。また行動や配慮にもつながります。そのような行事を楽しんで、その経験を試験に生かしてほしいですね。
中村:生活面では、弁当づくりから食卓が見えてきます。特別なことをしなくても、毎日の遊びが大事です。家での豊かな会話、豊かな生活を見る課題が多いようですので。
大野:それが顕著なのが、おままごとですね。
中村:おままごとでのささいな会話から、家庭を見る。このようなシンプルな課題になる傾向は今後強まるかもしれませんね。
河本:親、兄弟との間で、普段からお礼を言っているかどうかもわかります。
大野:弁当作りという課題が出たとしたら、色合いを考えることも大事です。
神尾:授業では、てんこ盛りにしてしまう子もいました。
神尾:ペーパーが出ないといっても、勉強をしないのではなく、しっかり勉強した上で、外に出て思いきり遊ぶことが大事なのではないでしょうか。
大野:親とも友だちとも遊ぶ。訓練だけで遊ばない子は、入ってからも遊べません。
神尾:試験の時は、なんとか遊べても、入学するとそうした部分が見えてくるものです。だから試験内容も変わりつつあるのでしょう。
中村:じっくり人の話を聞けることが、やはり大切です。
神尾:そのためにも親は子供の目を見て、しっかりと丁寧に話すことが原点です。そして、自信を持って、どっしりと構えてください。